転生魔女フォレストと太陽の雫
第一章 
  目眩をおこす闇の中、女のやわらかな声が微かに届いた。  

《目を覚ましてはいけません》――頭の中で直接届いているような感覚がした。

《あなたのような人たちがなるべきものではないから》

一体、何を意味する言葉だというのか? ――彼女はわからなかった。

 この直後、体全体に心地のよい日差しを感じた。昼寝には最高の天気がきっと目を開いた先には広がっている。そうに違いない。彼女は、猫のように両手を上に伸ばして、全身をほぐした。最高に気持ちがいい朝だ。そう思って、目をこすり目をこすっていた手を離しながら、彼女は目を開いた。

 巨大な木々の葉は、風に揺れてざわめいている。そのざわめいている葉のすき間から、真っ白な日差しがスポットライトのように現れている。ここは……森? なぜなのか? なぜ私はこのようなところに寝そべっていたのだろうか? ――深く考えこんだ。でも、わからなかった。

 上半身をゆっくり起こすと、彼女は周囲を見渡した。
 うねるように絡み合う木と木、そのすき間からのぞくのは、巨大な木々の葉と真っ白な日差し。自分をも溶け込む、うねるように絡み合う木と木のまえは、日陰になっているのがわかる。
 このとき、小さな男の子がぼーっとした表情でこちらを見つめていたことに気がついた。

「ねえ、君。ここが何処なのか教えてくれない?」

彼女はその場で、話しかけた。

「サイカの森……」

男の子は、恥ずかしそうに体をねじらせながら言った。

聞いたこともない名前の森だった。彼女の中で、ますます疑問が膨らむ。

すると、男の子の背後の木々の間から女性の声が聞こえてきた。

「ザック、そこで何してるの?」

現れたのは、中年くらいの女性だった。エプロンをつけて、ブラウン色の手袋をはめている。

男の子ザックは、背中を丸めた。

女性は、こちらに気がつくと唇を引き上げて笑顔を見せた。

「あんた、迷子かい?」

「そう……みたいです」

眉を下げて、言った。

「そうか。住まいはどこなんだい? なんなら、送ってやるさ」

彼女は、この親切な女性の笑顔にすくわれた。

「札幌市です」

「ん? 聞いたことのない場所だねぇ。そういや、あんたお腹すいてるだろう?」

「はい……」

「なら、決まりだねえ。ついて来なさい。うちに案内するから」

そう言った女性は、一度強く胸を叩くと歩き出した。

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