ハッピーアワーは恋する時間
ハッピーアワーに、乾杯。 
「あっ!亜幸さん!何か拭くもの・・・」
「これ使え」と言って亜幸さんが差し出したのは、ベッドのどこかにあった、彼のTシャツだった。

あぁなんか・・・今更だけど、すごく恥ずかしい・・・。

亜幸さんの顔を見れなくて、俯いたまま「ありがと」と呟いた私に、「すぐ戻る」と亜幸さんは言うと、寝室から出て行った。

・・・ついに、亜幸さんと、して・・・・・しまった。

そりゃあ私だって29のアラサー女だし、数時間だけ結婚してたことだってある。
だからこれが初体験だった、というわけじゃない。
でも・・・と思いながら、手に持ってる亜幸さんのTシャツをじっと見た。

亜幸さんの逞しい上半身を鑑賞するどころか、Tシャツを脱いでいたことすら知らなかったし、私だってこんな恰好・・・。

私はフゥとため息をつくと、まずは腿を伝う透明な液を、Tシャツで拭った。
そして、亜幸さんにずり上げられたブラとキャミソールとシャツをずり下げて、キチンと正位置に戻し、ベッドから下りた。

立った途端、一瞬よろめいたけど、すぐ体勢を立て直した私は、床にクシャッと落ちている自分の着るものをサッと拾って、パッと身につけると、寝室から出た。

ここを出なきゃ。
ここから・・・亜幸さんから、離れなきゃ・・・。

と思っていたのに、寝室から出た途端、亜幸さんと鉢合わせしてしまった。

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