ハッピーアワーは恋する時間
この香りは・・・。

ふと見ると、すぐ目の前に、ライラックの花があった。

小さな花の一つ一つはとても可憐で、それが密集した一つの大きな花からは、甘く芳醇な香りが、風に乗って漂ってくる。
私は思わず目を閉じて、その香りを吸い込んだ。
その途端・・・。

「触らないで!」と言っている、ウェディングドレス姿の私と、ブーケでバシバシ博文さんを叩いた、あの・・おぞましい場面、そして床に散らばった、たくさんの小さなライラックや、しおれたブーケが、鮮明に脳裏で再現された。

< 23 / 137 >

この作品をシェア

pagetop