この恋心に嘘をつく
雪に白鷺

*****


専務付きとなった初日。
はじめて、専務室のドアの前に立った。

1か月前、凛子は観月と約束していた。
研修期間の間は、専務室には行かない、と。

けじめというものは、どんな形であれ必要だ。

研修に集中するため、不必要なものはすべて取り除いた。


「ふぅ…」


落ち着くため、深呼吸を繰り返す。


――コンコンコン


3回のノックの後、“どうぞ”と声が返ってきた。


「失礼します」


はじめて入る専務室は、とても広い。
敷き詰められた絨毯に、総ガラス。

その威圧感に、さすがに緊張してしまう。


「今日から専務付きとなります。どうぞ、よろしくお願いします」


お辞儀をすれば、環は微笑んで立ち上がる。

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