ワケあり彼女に愛のキスを


「……なんだよ」

翌日朝、優悟がテーブルに置いてこれから食べようとしていた朝食をガン見する女がひとり。
天板がガラス性のダイニングテーブルの上にあるのは、ハムエッグをはさんだトーストとサラダ、あと缶詰の桃。
それを食い入るように見るのは、今にもヨダレをたらしそうな舞衣だ。

優悟よりも遅く起きた舞衣は、ふらふらしながら顔を洗ったかと思えば、朝食を見るなり行動を停止させた。

「だって、すごくおいしそう……優悟、料理できるの?」
「一人暮らししてりゃ、それなりに作れるようになんだろ。
言っとくけど、やらねーから」
「分かってるよ。夕飯食べさせてもらって泊まらせてもらいながら、朝ご飯までなんて図々しい事お願いしない」

言い終わった途端、タイミングを計ったかのようになったのは、舞衣のお腹。
慌てて腹を押さえる舞衣のベタさにため息をついてから、優悟が立ち上がって取り皿を用意する。

トーストを半分に切って、サラダと桃の半分を取り分けてから、舞衣の前に差し出した。

「ほら」
「でも、優悟のが少なくなっちゃうからいいよ。私、本当に大丈夫……」
「目の前で腹鳴らされてたら、うまいモンもまずくなる」

強い口調を返された舞衣は戸惑った表情を見せた後黙って向かいに座ると、優悟が目を合わせるのを待ってから嬉しそうに笑う。

「ありがとう。優悟」
「……別に」
「いただきますっ」

おおげさなくらいに「おいしいっ」を連発する舞衣を笑いながら、優悟も食事を進める。
時間は6時半。
まだ家を出るには一時間以上の余裕があった。

「おまえ、今日どうすんの?」

グラスに牛乳を入れて置くと、舞衣が「ありがとう」とお礼を言ってから答える。

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