恋、物語り



「あの…あの…。
小林くんは私なんかで良いの?」

小林くんと一緒に写っていた彼女の顔が浮かぶ。


「私、元カノみたいに可愛くないし、
……こんなことだけで嫉妬しちゃうし…」

「うん…」と彼は相槌を打つ。


涙が溜まって流れていく。
何の涙なのか、わからないけれど、とても胸が苦しかった。


「…昨日、海で中島くんに会ったの。
その時、小林くんがクラスの人と遊んでるって聞いて…
ユウコちゃんも一緒なんだな、と思ったら
すごくすごく嫌だったーー」

「…アヤ」

出てきた言葉が止まることはなかった。


「小林くんがユウコちゃんに笑いかけてるかなとか、考え出したら止まらなくて…」

「…アヤ!」

腕が彼に掴まれる。
大きな声で名を呼ばれてハッとした。


彼はずっと私の名を呼んでいた。

「アヤ」
「…ごめんなさい、めんどくさいよね」

涙が止まらなくて…

「…アヤ、俺…期待していいの?
アヤが俺のこと…好きなんじゃないかって」

期待して…
期待してよーー…




「小林くん…っ

ーー好き…だよ…」


掴まれていた腕がグイっと引っ張られた。
そしてそのまま彼の腕に包まれたーー…

暖かくて、彼の臭いがする。
その温もりに安心して私は目を閉じた。
このままーー…
そう、このまま彼に吸い込まれてしまいそうな、
そんな感覚に陥った。

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