痛々しくて痛い
「それが生まれるまでにどれくらいの時間を要したか、なんてのはぶっちゃけ関係ない。クオリティが申し分ないなら、採用する流れになるのは至極当然だし何ら不思議な事ではないだろ?」

「そうそう」


伊織さんもすぐさま賛同してくれる。


「もちろん、実行委員会と連携しつつ、これから色々と具体的に話を詰めて行かなくちゃいけなくなるとは思うけど、でも、やれるよな?」

「……はい」

「よし、頑張ろう」

「すげーよなー。綿貫って」


するとそこで、麻宮君が心底感心したような声音で意見を述べた。


「おっとりぼんやりしているように見えるけど、それは慎重で思慮深いからなんだよな。そんでここぞという時に今みたいにバチっとスイッチが入って、あっと驚く発想力を披露したりするし」

「それはもう生まれ持ってのセンスなんだよなー。正直羨ましいよ」


染谷さんが『ふぅ~、』とため息を吐きつつ話を引き継ぐ。


「正しい情報である事が大前提だけど、そこに何かしらのエッセンスを加えて、興味を引くような形にして外部に広く発信する、っていうのが重要なタスクである広報課にとっては、持ってこいの人材だったって事だな」

「ですよね」


染谷さんに頷いてみせたあと、麻宮君は私に視線を戻し、満面の笑みを浮かべて続けた。


「綿貫は、選ばれるべくして選ばれた、我が部署の期待の星だったって訳だ」

「えっ。そ、そんな…」
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