痛々しくて痛い

 アミ



「んふふ」


照れ臭くてくすぐったくて、思わず笑いがもれる。


「なんだよ?変な声出して…」


ぶっきらぼうな口調とはうらはらに、麻宮君もすこぶる照れているようだ。


少し体をずらして、さらに顔を接近させると、私は彼に囁いた。


「かわいい」


「…え?」

「麻宮君てやっぱり、すっごく可愛いね」


私が彼を上から見下ろすなんて、普段だったらありえない。


こういうポジションを確保できるのは、最初で最後のチャンスかもしれない。


だからちょっとばかりお姉ちゃん風を吹かせたくて、調子に乗って、思わずそんな事を口走ってしまった。


でもでもホント、麻宮君、とっても可愛らしいんだもん。


するとふいに、私の腕を掴んでいたその手が離れた。


あ。いいかげん疲れてきたのかな?
なんて思っていたら、そっと後頭部に添えられる。


そのままグイ、と引き寄せられて、上半身のバランスが崩れた。


気がついた時には


麻宮君の唇と、私の唇が、しっかりと重なり合っていた。


だけど時間にすれば、ほんの数秒の出来事だった。


頭をやんわりと押さえていた手はすぐに外されて、また先程と同じポジションに戻る。


つまり私の左腕に。


何だか良く分からず、ぼんやりとした状態でとりあえず体を起こした。


「……なんだ、つまんねーの」


麻宮君がポツリと呟く。
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