砂漠の賢者 The Best BondS-3

「えー?至って真面目なんだけど。エナちゃんと居たらおもしろそうだから。それじゃ、理由になんない?」


「ホンモノのバカだな。アンタ」

「お前が言うな。単純バカ。ホラ、ちんたらしてねえでエナちゃん追うぞ」


歩き出したジストの背中をゼルが追う。

果たして、今こうしてエナを追いかけるのは義理人情のためだけなのか。


わからない。

今はまだ。


覚える寂しさも、


感じた苛立ちも、


宿る不安も。


掴めそうなその正体は今はまだ霧の彼方で。


わからないままジストを追い、エナの姿を求める。

次に顔を合わせば言ってやろう。


『てめェの気持ちだけ押しつけんじゃねェ』と。


受け取ることも覚えやがれ、と。


言ってやろうと心に決めた。


「……ゼル?」


呼ばれてゼルは少し緩んでいた自分の口元に気付き、引き締めた。


「……ンだよ?」


「何嬉しそうに笑ってんだか知らねえが」


見られていたことに何となく気恥ずかしさを覚える。


「俺は馬車手配してくるから、お前その辺でおとなしくまってろ」


言い方はやはり上から目線。


けれどこの男は、無理な注文をつけてこない。


それが妙に悲しかった。


そしてそんな自分の感情にも、おそらくこの男は気付いているのだ。


妙に勘が良いから。




.
< 21 / 147 >

この作品をシェア

pagetop