不良リーダーの懸命なる愛 〜プール編〜

「ご、ごめんなさい!霧島くんっ!!私、決して馬鹿にしたつもりではなくて…!」


「初めてなんだよ、プール。」


「………………へ??」


その時突然、彼がボソッと独り言のようにそう呟いた!



「…………。」


「え?あ、あの?霧島くん??」


「…………。」



あれ?!


ますます顔が赤くなってきちゃった!!



私は訳がわからず、霧島くんの顔をもっと見てみたくて覗き見ようとする。



すると。



「だから、初めてなんだって俺!………………プールが。」



ん?!



プールが、はじめて???



………………。




…………。




それって、


どういうことなんだろうか。



「えっと、それは“アクアランド”に来ることが初めてという意味で捉えて間違いないでしょうか……?」


と恐る恐る彼に聞いてみる。



「いや、違くてさ。……………プール自体が初めて…っていうか。人生で初めてなんだよ…。」


「えっ!!?人生で初めて!!?」



うそ!!


まさか“プール”そのものが初めての経験だったなんてっ!!!



「だから墓穴掘らねぇように調べてきたっていうか…。」


「え?墓穴??」


「はぁ~~!マジでハズい…!んな、かっこ悪ぃこと咲希に知られたくなかった……。」


と、肩をガックリと落として頭を抱えてしまった霧島くん。



そんな彼に私は遠慮がちに訊いてみた。


「霧島くんの通ってた小学校や中学校の体育の時間でプールの授業は無かったの?」



すると霧島くんは赤らんだ顔で高台からの景色を眺めながらぽつりぽつりと語りだした。



「小学校ん時はさ、校舎が海の近くにあったからプールは無かったんだよ。だから海で授業したっていうか…。」


「すごい!!海で泳ぎの練習してたんだね!!!なんだかプールよりもそっちの方が魅力的に感じるかも!」



「ならいいんだけど。…で、中学あがる頃にはこっちに引っ越してきてて。」



そうなんだ!!初めて知ったな~!



ここが霧島くんの地元だと思っていたから、新しい発見かも!!



「じゃあこっちに引っ越して来たっていうことは、中学校ではプールがあったんじゃない?海が近くにないから。」


「まぁ、中学はあったみたいだけど、俺サボってばっかだったから全然授業受けてないんだよな。」


「そうだったんだね…。」




そこで私はふと思った。




今なら、訊けるかもしれない…!



私は思い切って霧島くんに“あの話題”を振ってみることに!

< 54 / 98 >

この作品をシェア

pagetop