続・祈りのいらない世界で
次の日の夜。

仕事から帰ってきたイノリにキヨが飛び付くと、イノリは玄関のドアに頭を打った。



「おかえりなさい!イノリ♪」

「…お前さ、毎日毎日帰ってくる度飛び付くのやめろ!」

「だってイノリが帰って来るの嬉しいんだもん♪」



後頭部をさするイノリに嬉しそうにキヨはある物を見せた。




「…は?なんで手錠なんか持ってんだよ」


「イノリがまた勝手にいなくなりそうで恐いって話したらケンがくれた。ケンの愛用品だって♪」


「…あいつ性格はMなのに性癖はSなのか?…気持ちわりぃな」



イノリがケンの性癖を否定していると、キヨがニヤけながら呟いた。




「ケンの性癖知りたい?」

「あ?…何でお前が知ってんだよ!」

「だってイノリがいない時、私とケン、付き合ってたもーん♪」

「――くそっ!!俺のせいだけどムカつく…」



険しい顔をするイノリに笑うキヨ。




「嘘だよ。私、ケンとは何もしてないもの。ケンはずっとわかっててくれてたんだよ。私がイノリしか見てない事を」


「まぁ空気読めない割には、たまに人の気持ち察するからな、ケンは」


「…イノリの方がKYだと思うけど」


「何だと!?」




玄関で騒いでた2人はその日の夜、手錠で繋がれて眠った。



翌朝、手錠のせいで寝相の悪いイノリに引っ張られベッドから落ちたキヨは、ケンに手錠を返却した。
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