続・祈りのいらない世界で
「…イノリは優しいね」

「フウには否定されたけどな」



2人がフウを見ると、フウもジッと2人を見つめていた。



「……きよ、えんえん?」

「うん。エーンって泣いちゃったの。フウと同じだね」

「……ふう、えんえん、ないないよ」



フウはイノリの膝の上に座っているキヨに駆け寄ると、キヨの膝に乗った。


フウはキヨの頬を撫でる。




「……きよ、いいこね〜」

「フウもいい子よ〜♪」

「人の足の上で暴れんな!!」



イノリの膝の上でじゃれ合うキヨとフウ。


3人がソファの上でギュウギュウとくっついていると、ケンが仕事から帰ってきた。




「…なーんか、3人が家族みたいだな」

「ケン!おかえり。最近、帰ってくるの早いね」

「ただいま、キヨ♪…俺、バンド辞めたからさ」

「えっ!?」



目を見開くキヨをヨソに、ケンはテレビの前に座った。




「やっと売れねぇってわかったのか?」

「ケンから音楽を取ったら何が残るの!?」



酷い発言をする北山夫婦。




「カンナの為にも、バンドなんかやってる場合じゃないって気付いたんだよ。…俺もいい歳だしね」

「カンナの為?」

「うん。カンナやフウ、心配してくれるキヨやイノリの為って言った方が合ってるかな」



ケンはそれ以上、何も話さなかった。


でも、少しでもカンナを想ってくれている事は確か。



ケンが優しくて正義感が強いのは昔のままなのだと思った。




その日の夜更け。

キヨが寝た事を確認すると、イノリはカンナの部屋を訪れた。



「カンナ。お前、最近フウをほったらかし過ぎだ」




カンナの部屋は片付けていないのか、暴れたのか酷く荒れている。
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