続・祈りのいらない世界で
「…あれ?何か殺風景になったなと思ったら…ケン、ベースやアンプは?ドラムもないし…」


「あぁ、売っちゃったんだ」


「売った!?音楽バカのケンが!?」


「うん。もうバンドも辞めたから歌わないし、弾かないからね。

それに俺はイノリと違って正社員じゃなくて派遣だから収入少ないし、キヨの出産費用があるのに、家賃やら食費やらフウの養育費やら全部イノリ任せにさせちゃってるだろ?だから少しでもお金作らないといけないからね」


「ケン、イノリは別にお金の事は気にしてないよ?私だって少しなら貯金あるし、変な心配しないで」


「…そうもいかないよ。俺は男だからね」



ケンは薄く微笑むと、ケースに閉まったギターを持ち上げた。

キヨは反射的にそのギターケースを取り上げる。



「キヨ?」

「…これは売っちゃ駄目!!これだけはヤダ!!」



そのギターは、ケンが中学生の時に初めて買ったギターだった。

お小遣いを必死で貯めていたケンを知っているキヨ。


それにこのギターはイノリと離れてる時、ライブでキヨへの歌を唄ってくれた時に弾いていたギター。




キヨは思い出やケンの愛情が沢山注がれたギターを手放したくなかった。



「…キヨ、ありがとう。でも大丈夫だよ。それは何があっても売らないからね」



ギュッとギターを抱きしめるキヨに優しく微笑むケン。



「…同窓会と言えばさ、高校の時、キヨが頭髪検査に引っ掛かって先生にめちゃくちゃ怒られた事あったよね」


「あー…そんな事もあったね。私の為にカゼとカンナとケンが染めてくれたんだよね」


「イノリは祭ちゃんが厳しいから染めはしなかったけど、先生に怒鳴り込みに行ったよな。あれは面白かった」




それは5人が高校に入学したばかりの頃に行われた、新入生の服装検査のこと。



生まれつき色素が薄いキヨは髪も目も茶色だった為、頭髪検査に引っ掛かってしまったのだ。
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