続・祈りのいらない世界で
小さい頃は一緒にいるのが当たり前だと思っていた存在。



でも上京してから気付いた。


一緒にいるのが当たり前の存在なんていない。




人は突然離れていくし、突然いなくなったり、死んでしまったりする。



だから、こうやって一緒にいられる事は当たり前なんかじゃない。


だから、当たり前のようにそばにいてくれる人を誰よりも大切だと思える。





イノリがここにいる限り、永遠になくならない星が宿るイノリの瞳を見つめながら、キヨは背伸びをしてイノリにキスをせがんだ。



月明かりに照らされたイノリの影がキヨの影に重なった後、イノリはキヨの耳元に口を寄せ、先程言い掛けた言葉を囁いた。





“お前ほど俺を幸せにしてくれるヤツはいない”



イノリが囁いたのは
この上ない、愛の言葉。







いくつ歳を取っても

すべてが変わってしまっても


この存在を愛し続ける事だけは変わったりしない。






満天の星空にフワフワと昇っていく二筋の白い煙。




今、カゼの声で

“もし流れ星が本当に願いを叶えてくれるなら、何を願う?”

と聞こえたら




『カゼを生き返して下さい』

『子どもが無事に生まれてきますように』

『あの頃に時間を戻して下さい』



いつもなら叶って欲しいと思う願いを願ったりしないだろう。


今、願いが必ず叶うならきっとこう願う。




“イノリだけは永遠に失いたくないです

だからイノリだけは何があっても失わないで済みますように…”




他の女の人を見ないで
私以外のことは考えないで


イノリだけはいなくならないで
イノリだけは先に死なないで…




変な嫉妬に、変な不安。




でもやっぱりキヨの願いを叶えてくれるのは星じゃない。



キヨが願う事はいつもイノリの事だから、それを叶えられるのはイノリだけ。





そうキヨが改めて確信した同窓会の帰り道。
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