続・祈りのいらない世界で
「…何か臭くない?私の気のせい!?」

「いや…気のせいじゃないわよ、キヨ」



匂いを気にする4人をよそにカゼはいただきますと呟き、鍋を掻き回した。




「カゼ、美味しい?」

「………うん。ミステリーな味」

「ミステリー!?ミステリーな味ってどんな味!?」

「………キヨも食べればわかる」



恐る恐る見えない具材を口に運ぶ4人。



リビングには暫しの沈黙が流れた。




「うげぇぇぇ!!俺が食ったの甘いっ!!」

「ぎゃーっ!!何かムニュとしてドロッとしたぁー!!」

「俺のは堅ぇ!!噛み切れねぇ」

「…ぐっ。私のは辛いし臭いわ」



ミステリーな味の意味がわかった4人は暫く悶絶した後、黙々と食べているカゼを睨んだ。




「カゼ!!お前、何入れたんだ!!」

「………ケンのはあんぱん。キヨのはケーキ。イノリのはスルメ。カンナのはニンニクかな?俺のはみかんだった」



その他にカゼが入れたのは、チョコにアロエにチーズ、たくあん…

出汁はインスタントのコンスープ。



鍋らしい具は白菜しか入っていなかった。




「………息止めて食べれば大丈夫」

「アホか!!なんで鍋用に買った材料が白菜しか入ってねぇんだよ!!」

「………他の材料、床に落としちゃったから」



リビングの電気をつけ、キヨとイノリが台所に向かうとシンクの下には野菜や肉が散乱していた。



「本当に落ちてる…」

「電気を消すからこうなるんだよ!!今日の晩飯どうすんだ!!」



空腹のせいでイライラしているイノリは、得体の知れない鍋を食べるカゼに文句を言う。




「…仕方ないわね。まだスーパーやってるし、材料買いに行きましょうか」


「だな。家には何もねぇし」


「えー…。俺もう限界。出前でいいじゃん」


「出前なんてお金がバカにならないでしょ!!…ケンの奢りなら別にいいわよ」


「俺、今月ベース新調してスッカラカンだから無理!!」



ケンはジーパンのポケットから財布を取り出すとパタパタと振る。
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