続・祈りのいらない世界で
「…お前はさぁ!!妊娠中色々ケガしてっけど、妊娠してる10ヵ月くらい大人しくしてらんねぇのかよ!!」


「だってフウを助けないワケにもいかないでしょ?」


「そうだけど…。あ゛ーっ!!!!ガキの頃みてぇに一緒にいねぇと心配だ!!どうしてお前はそうなのかな」



頭を抱えて悩むイノリ。




「ねぇねぇイノリ、明日仕事お休みでしょ。子どもが登らないように階段に取り付ける柵買いに行こうよ」


「そうだな。買いに行くか」




翌日。
早速柵を買いに来たイノリとキヨ。


柵が売ってる売り場を探していると、キヨはジュエリーの並ぶ売り場を見つけた。



「わぁ。これ可愛い♪カップルに人気NO.1だって」



キヨが見ていたのは、間にアトラス模様が刻印されている指輪。


キヨはペアリングコーナーを眺めていると、少し憧れていた事を思い出した。




「ねぇイノリ、これお揃いで買おうよ♪私、ペアリング買った事ないから欲しい」

「はぁ!?指輪なら結婚指輪があんだろ!!それに出産費用とかあんだから余計な金使わせるな!!」

「ケチ!!!!」



キヨはイノリを睨むとトイレへと向かった。




イノリとは付き合ってすぐに結婚したようなもの。



だから恋人同士の証であるペアリングを買った事はない。

キヨは今まで誰かとのペアリングを買った事もない。




片思いをしていた時、一緒にリングを選ぶカップルの姿やペアリングをはめているカップルを羨んでいたキヨにとって、ペアリングは憧れそのもの。



今はもう夫婦なのだからペアリングなんて必要ないが、キヨは欲しくて仕方なかったのだ。




「…イノリのケチんぼ。意地悪。バカ、つり目、寝癖!!」



キヨがイノリの悪口を言いながらトイレから出ると、入口にイノリが立っていた。



「…ここ女子トイレだけど?男子トイレはあっちだよ、ケチんぼさん」



口を尖らせて嫌味を言うキヨ。
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