続・祈りのいらない世界で
「キヨ、洗剤ってどれくらい入れればいいの?」

「掃除機どこ?」

「布団たたきは?」



ケンは家中をウロウロしながら、その日の家事を終えた。



「お疲れ、ケン。ありがとうね」

「キヨ、毎日あんな家事とフウの育児を1人でやってたんだね。大学生の頃は5人で分担してたから楽だったけど1人じゃキツいよ。
キヨの有り難みが分かった気がする」



ケンはキヨを拝むと、キヨのお腹を撫でた。





「…ケンは昔から変わらないね」

「そう?大人っぽくなったと思うんだけどな」

「ううん。見た目じゃなくて、いつもピンチの時そばにいてくれる事がだよ」



自殺行為をした時も
この家を出ようと思った時も

ケンはいつもそばにいてくれた。




「そうだね。イノリは昔からここぞって時にいないよな。まぁ今は仕事だから仕方ないんだけど」


「うん。そうだよね。…なのに何で私はイノリを好きなんだろう」


「ここぞって時はいないけど、何処にいたって一番キヨを心配してるのはイノリだからだよ」



ケンは優しく笑みを浮かべると、ソファに座っているキヨの隣に腰を下ろした。


キヨはケンの肩に頭を乗せる。




「ケンはいつまでもそのままでいてね」

「うん、このままで十分いい男だからこのままでいるよ」



ケンらしい発言を聞いたキヨが笑うと、ケンはキヨの手を握った。
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