続・祈りのいらない世界で
「…思い出した?」

「うん。あの歌はケンのデビュー作だったね」



生きがいだったバンドを辞めて、少し元気が無くなったケンを知っているキヨ。


そんなキヨに出来る事。




「ケン、歌って。…あの頃のように相棒のギターを弾きながら、あの歌をもう一度…」



観客は私しかいないし
楽器はギターしかないけど


ケンの隣りという特等席で、私はいつでもあなたの歌を聴くから



どうか
歌う事を辞めないで。




どんなに歳を取っても声が枯れるまでは、夢を諦めないでいて。





もう、好きだとか愛してるなんて言って貰えなくても

この世界で一番、ケンの歌が好きなのは私だから

ケンが歌う時くらいはそばにいさせて。



お願いだよ、ケン…。





「…〜♪」


小さく、でも優しい声で歌うケン。



15歳のケンが作った歌が時を越え、24歳のケンの元に再び戻ってきた。




「今度は“YOUSEI”って曲を作ろうかな」

「わぁ!ケンおじちゃんが歌を作ってくれるって。よかったね、陽ちゃん」

「おじちゃん!?」




キヨとケンは膨らんできたキヨのお腹に手を添え、ケンの作った歌を歌った。




ケン。


歌いたい時は思う存分歌っていいよ。



もう少ししたらもう1人、あなたのファンが出来るから。




その時は

あなたの声で

あなたの作った曲で

相棒のギターと共に、最高の子守歌を歌ってあげてね?




今までずっと

支えてくれてありがとう、ケン。
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