続・祈りのいらない世界で
「バスローブまである。…イノリがシュルっと私のバスローブの紐を外して……キャーッ♪」

「お前、酒飲む前から酔ってんのか?」



バスローブを見ながら何かを妄想して騒いでいるキヨにイノリがツッコむ。




「しっかしデッカいベッドだな。2つもいらなくね?」

「寝相の悪いイノリには丁度いいんじゃない?」



ひと通り部屋を物色した2人は窓際のソファに座り、買ってきたビールとお菓子をテーブルに並べた。


窓からは夜の東京湾が見える。




「贅沢な1日だったなぁ。ケンとカンナに感謝しなくちゃね」

「はぁ〜…生き返る」

「ちょっと!!1人で先にビール飲まないでよ!」



2人は色んな話をしながら晩酌をした後、ベッドに潜った。


沢山歩き回ったせいか疲れを感じたキヨは、自分の歳を感じた。




楽しかった1日も日付が変わり、あっという間に旅行1日目が終わりを迎えようとしていた。




「楽しいね。2人で旅行も、夜中にコンビニも」

「俺らは何処に行くにも、いつも5人でだったからな。確かに新鮮だ」

「…これからは“幼なじみ”でじゃなくて、“家族”でになるんだよね」



2つあるベッドの1つに一緒に横になっている2人。


イノリは寂しそうなキヨの頭を優しく撫でた。




「…寂しくないよ?私にはイノリがいるもん」

「あぁ。俺はこれからもずっと、美月と一緒だから」

「…今度は陽ちゃんも一緒にお出掛けしようね。色んな所にいっぱい連れて行ってあげよう」



もう5人で何処に出掛ける事は出来ない。

カゼはいないし
それぞれ家族がいるから。



それに、きっと…




「…寝やがったな。楽しみはこれからだってーのに」



キヨが先に寝た事が気に食わないイノリは、ブツブツと何かを呟いた後、キヨを抱きしめて眠った。



夫婦なのに家の寝室は越してきた時のまま別々であるキヨとイノリ。


イノリは寝室を一緒にしようと思った。
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