続・祈りのいらない世界で
「………俺がイノリの下着の好み知ってたらアドバイスしてあげられたのにね。イノリは白派か黒派か。はたまた赤派か。レース派か綿パン派か。はたまた紐派か」


「カゼ、その発言変態っぽいよ」



キヨが溜め息をつくと、カゼはキヨの頭にイノリのトランクスを被せた。




「ぎゃあああ!!これまだ洗濯してないヤツでしょ!?汚いっ!」

「………イノリのだから大丈夫」

「何が大丈夫なのよっ!カゼのバカぁぁ!!」



2人が洗面所で騒いでいると、寝癖のついたイノリがやってきた。

イノリはキヨの頭を見ると固まる。




「…キヨ。お前っ…俺のトランクス被って何やってんだよ!!変態か!?」

「げっ!イノリ!!これはカゼが勝手に…」



イノリは不審な顔をしたまま、洗面所から去って行った。



キヨはイノリのトランクスを床に投げつけると、カゼの頭を叩いてイノリの後を追った。



この日5人は洗濯当番について会議を行ったのだった。






その日の夕方。

5人は家の前の狭い道路にチョークで落書きをしていた。


端から見ると変な大人達である。




相合い傘に線路、動物にキャラクター、ケーキや音符。

コンクリートには5人が描いた色々な絵が白いチョークで描かれていた。




「あ〜懐かしいね♪私達がまだ幼稚園児の時、よく家の前に落書きしてたよね」


「そうだな。親達が消すのに苦労してたんだよな」


「………地元の道路は広かったけど、ここは狭いね」


「私達が大人になったからそう思うんじゃない?狭く感じるのは道のせいじゃなくて私達の体せいよ」




小さい頃は、家の前の道路が大きいキャンパスみたいで、沢山の絵を描いても埋め尽くせなかった。



あの頃

イノリは覚え立ての平仮名を
キヨは5人の似顔絵を
カゼは食べ物の絵を
カンナはアルファベットを
ケンはオタマジャクシのような音符をひたすら描いていた。



そして今も。
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