眠れぬ夜をあなたと
今日は服飾系の専門学校生である奈波ちゃんに勧められた、魔女スタイルの衣装を身につけている。バサバサのつけ睫毛は目元が痒くなるけれど、いつもよりもアイラインを強く入れてキュッとネコ目に仕上げた。ロングのウイッグが黒い絹糸のように顔の周りを囲っていて、私の原型がほぼ消えている。

魔女の黒いドレスは前に大きなスリットがはいっているので、歩くたびに膝頭が大きく覗く。そのおかげで、裾が長いわりに歩きやすい。

「その格好で同伴してくれる?」

少しばかり頬を紅潮させたケイは、甘えるように首を傾けた。きょうびの男の子ってこういうの好きなんだろうか、と思いながら机の上に置きっぱなしにしていた煙草の箱に手をかける。

「……それはないでしょ」

「うそっ。めちゃくちゃ可愛いのに?」

残念そうな顔のケイは、私が煙草を口にくわえると条件反射のように、ポケットからライターを取り出して火をかざしてくれた。

こんなの、決して可愛くはない。唇はアメリカンチェリー色、魔女の顔色はいつもより白め。まるで昔のアメリカ映画に出て来る怪物ファミリーの母親みたいだ。可愛い要素がどこにも見当たらない。

「これ、この間の罰ゲームのつもりなんだけど」
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