【流れ修正しつつ更新】流れる華は雪のごとく

「おわっ、何だよ水無月!急に飛びかかって来んなよ!」


「うるさい」


「まあまあ水無月、後始末して帰らなきゃいけないからさ。今は抑えて。結ほんと煩い」


「理不尽!!」


この結たちの扱いには慣れたもので、後の三人は壊れた屋敷の修繕を考えているようだ。


「どうかしましたか、露李先輩?」


いつの間に傍に来ていたのか、静が露李の横にしゃがんで声をかけた。


「ううん…何でもない」


静の見たところ何でもないようには見えなかったのだが、特に話すこともなく微笑む。

露李の指が、美喜の身体に触れる寸前で止められた。

何か思い詰めた表情で固まっている。


美喜の身体は確かにそこにある。

それに触れてみたかったが、果たして自分が触れても良いものか。


「静くん、美喜の身体…運んでくれるかな」


明らかに沈んだ声に静は少し目を見開き、小さく頷いた。


「静、お前運べんのか」


「疾風先輩。あー…僕」


育ち盛りと言えど中学生の静には、自分より背の高い相手を運ぶのは至難の技だろう。

一旦壊れた家の資材を一ヶ所に集めようと、疾風は両手に沢山の破片を持っている。


「浮遊の術も使えますけど、それじゃあんまりですよね…」


一人の人間に対し、という意味だろうか。

疾風は少し考えてから、自分の持っている破片を顎で指し、言った。


「お前、こっちを浮遊させろ。俺がそいつどっかに運んどくから」


「ありがとうございます」


すぐさま静が呪を唱え、萌黄色の気が疾風の両腕を包む。

破片がふわりと浮き上がった。


自由になったその手で疾風は露李を一瞥し、美喜を抱き上げる。


「露李。お前も一緒に来い」


一瞬、怯えたように露李が身体を震わせるのを、疾風は見逃さなかった。

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