【流れ修正しつつ更新】流れる華は雪のごとく
***

露李が、泣いている。


水無月は壁にもたれかかり、露李の声を聞いていた。

海松の腕の中で嗚咽を漏らしている彼女の声は、出会った頃と全くと言って良いほど変わらない。


『君は、辛そうに泣くね』


『なあに、それ』


『泣いてるのにもっと我慢してるみたいだ。絶対に深い所まで入らせてくれない』


『我慢が、私にできることだと、お祖母さまが仰っていたから』


年に合わず大人びた口調で言われたそれは、今でも水無月の記憶に残っている。

しかして心からの笑顔を見せるようになったことは、少なからず、幼い頃から傷つけられてきた露李の心が癒えてきていることを意味している。

彼女がまさか風花姫になれるとは思わなかった。

今まで以上に傷つくことになる。


それに関しては確かに怒りを覚えたが、露李が守護者と出会ったおかげで救われたこともまた事実。


─あー、複雑。


少しため息をついて、顔を上げる。

天井の木目は昔から苦手だ。

気持ちの悪い模様に見えてくるし、目が回る。


露李。早く君の笑顔が見たいな。


水無月はまた壁にもたれかかり、目を閉じた。


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