【流れ修正しつつ更新】流れる華は雪のごとく

「守護者か」


星月夜がニヤリと笑う。

赤くなっていた目は、もう黒色に戻っていた。

露李の喘ぎ声だけが張りつめた空気の中に響く。


「お姫様を一人にするなんざ躾がなってないな」


風雅は答えない。

口元には笑みすら浮かべている。


「そっちこそ。俺を怒らせるなんざ百光年早いなー」


あっけらかんと言い放つほどの余裕さだ。


「短気はいけない。風雅 結」


水無月が露李に話しかけた口調とは打って変わって冷徹に言った。


「名前覚えてくれてんのか?俺も有名になったなー」


風雅の顔にまた笑みが浮かんだ──が、すぐにそれは削げ落ちた。


「けどな、それじゃあ気が落ち着かねーな」


「そんな風に好戦的では、すぐに死ぬだろうな。風雅」


何かを含んだ言い方に、動けずにいる露李は下を向いたまま眉を寄せた。


「俺が怒るのは────こいつが傷ついた時だけだ」


凛とした声が辺りにこだました。

目を、みはった。

私なんかのために、どうして。どうしてなの。

お願い。私なんかのために、傷つかないで───。


「露李!」


「露李ちゃん!」


「露李先輩!」


朱雀たちが走ってきた。


「何された?」


朱雀が心配そうに露李の肩を抱いた。


「べ、つに…大したことじゃ」


咳き込み、鈍い呼吸をする姿はどう見ても大丈夫そうではない。


「って、何が大したことねぇって?」


水鳥が露李の前にしゃがみこみ、頭に手を置く。


「露李先輩。強がりはダメですよ」


知恩の声が説教モードに切り替わった。


「…さてと。どうする、結?」


大地が風雅の横に跳び、ふわりと着地した。

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