【流れ修正しつつ更新】流れる華は雪のごとく

疾風、静、理津が座敷で露李を待っていると、スターンと豪快な音を立てて襖が開いた。


思わず三人がびくっと肩を揺らす。


「おはよう!」


「おはようございます、露李先輩」

挨拶を返してくれたのは静だけだ。

あとの二人はおう、と手を上げただけ。


「やたらと元気がいいな」
 

「今日はほら、天気が良いから」
 

「天気のせいなのか」


「大体最近は晴れてっぞ、姫」


疾風と理津が口を揃えて言うので、露李は唇を尖らせた。


「いいの」


「露李さま、朝食です」


海松が優雅な動作で朝食の載ったお盆を露李の前に置いた。

「あれ、皆は?」


「俺らはもう食べた」


疾風が欠伸をしながら答える。

「そっか…」

無意識にしゅんとしてしまっているのに露李は気づいていない。

一人で食べる朝御飯は少し寂しい。



「何だ、食べさせて欲しかったのか?何なら俺が口移しで……」


「うるさい理津」


「…言うじゃねぇか」


十八禁発言は控えて欲しいものだが、一緒には食べたい。


「悪いな、今から結界の見回りなんだよ。もうすぐ結先輩と文月先輩が来るはずだから、それまで我慢しろ」


疾風が困ったような声色で言った。


「うん」


「それじゃそろそろ行くな」


「じゃーな、姫」


「失礼します、先輩」


三人が立ち上がり、出ていこうとする。


あれ、と露李の頭に疑問が浮かび上がった。


「皆食べ終わってたのに、どうして待ってくれてたの?」


背中に呼びかける。


「それは……」


疾風が口ごもり、饒舌な理津も珍しく目をそらした。

静も曖昧な笑みだ。


「まぁ色々だ、色々」


かなりアバウトな返答に露李は怪訝な顔をする。

「気にすんじゃねぇ、じゃあまたな」


理津がそう言い残してそそくさと出ていき、二人もそれに続く。



「テキトーだな…」

残された露李は手を合わせてから艶やかな白米を口に運び、呟いた。



露李が心配だったこと、そして露李の笑顔が見たかったとは口が裂けても誰にも言えない三人だった。



< 59 / 636 >

この作品をシェア

pagetop