アタシはイレモノ
でも、どうしてだろう?


川上君はケンジ君の事を知らないはずだ。


その疑問が浮かんだ瞬間、栞理が川上君に抱き着いたのだ。


川上君は戸惑った様子を浮かべていたが、栞理を引き離そうとはしない。


泣いている栞理の頭を撫でて、気持ちを落ち着かせようとしている。


「菜月、大丈夫?」


呆然としてその様子を見ていたあたしに、亜耶が心配そうに声をかけて来た。


ハッとしてあたしはテラスの2人から視線をもどした。


「だ、大丈夫だよ」


そう言い、ぎこちなく笑う。


本当は心臓がドクドクしていて、嫌な汗をかいている。


栞理の涙は本物の涙なんだろうか?


わざわざ川上君に泣きつく理由もわからない。


あたしはテラスの2人を見ないようにして歩き出した。


「岡田さんも、川上君の事が好きなんだよね」


亜耶がそう言った。


あたしは小さく頷く。
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