アタシはイレモノ
風が吹き、川上君の前髪を揺らした。


こんな時でも川上君はカッコいい。


まるで、人間だとは思えないくらいに。


あたしは返す言葉を失って、うつむいた。


川上君は亜耶の事をよく見ている。


あたしよりも、ずっと。


長く一緒にいてもあたしはそんな考えに行きつくことはなかった。


そう思った時、あたしのスマホが鳴った。


画面を見ると《今家に帰ったよ》という、亜耶からの返事だった。


あたしは自分の体から力が抜けるのを感じた。


川上君の言った通りだ……。


「じゃぁ、俺は帰るから」


「……送ってくれてありがとう」


あたしはなんとか言葉を絞り出した。


お礼くらいはちゃんとしておかなきゃいけない。
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