アタシはイレモノ
「菜月、行こう」


カバンを持った亜耶に声をかけられ、あたしは自分の席を立った。


「うん……」


「なんか、元気ないね?」


あたしは隣で並んで歩く亜耶をチラッと見上げた。


相変わらず綺麗な顔をしている。


「あ、そうだ!」


あたしはある事を思いついて声を上げた。


「どうしたの?」


「今日、亜耶の家に遊びに行っちゃダメかな?」


「え……」


突然の申し出に亜耶は目を丸くしてあたしを見た。


「ほら、あたしって亜耶の家に行った事ないでしょ? 行ってみたいなぁなんて」


できるだけ自然な感じであたしはそう言った。


「ごめんね、ちょっと無理なんだ」


亜耶は申し訳なさそうにそう言った。


それはなぜだか予想通りの返事で、あたしは黙って亜耶を見た。
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