アタシはイレモノ
あたしがそう言うと栞理は視線を落としたまま「そうだね」と、答えた。


「亜耶にはもうそのことを伝えている可能性がある。でも、いなくなってないよね」


そう言うと、栞理がゆっくりと目だけをこちらへむけた。


睨まれているように見えて、少し怖い。


「校内であの子の告白した男子生徒は80人。いなくなったのはそのうち2人」


「……ってことは、学校内ではあまり人がいなくなってないってことなのかな?」


「たぶん。学校内ばかりで生徒がいなくなったら怪しまれるからだと思う」


そっか。


それで川上君は今でも行方不明にはなっていないんだ。


「もしくは……」


「え?」


「あの子がお気に入りを決めているのかもね」


栞理がそう言い、ギリッと歯をかみしめるのがわかった。



「気に入った異性には手を出していないのかも」



「そんな……」


それじゃぁまるで、亜耶がみんなを危険な目に会わせているような言い方だ。


言い返そうとした時、栞理が立ち上がった。


「気分が悪いから今日はもう帰る」


そう言ってファミレスを出る栞理を、あたしは止める事ができなかったのだった。
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