アタシはイレモノ
川上君もきっとそうだったんだろう。


ここへ戻って来た時違う外見を持っていたから、誰にも気が付かれなかったんだろう。


そして自分が失踪した事も風化してしまっていたんだろう。


川上君の言葉にはやけに重みがあったから、そうなんだろうと推測できた。


「気になってる事、聞いていい?」


「なに?」


「川上君の本名って、なに?」


「……俺の本名は田口。田口昌」


あたしは思わず目を見開いていた。


それは小学校の時にいなくなってしまったクラスメートの名前だったのだ。


メガネで小太りで、とても影の薄い子だった。


恋愛感情を持つなんてありえない。


そんな男の子。


そしていなくなった事さえ、忘れていた。


だけど、彼だとわかるとなんだか急におかしくなって、声を上げて笑っていた。


リリが驚いたようにあたしを見上げる。
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