君に届かない。
+...




高校生活も後半に入り、周りの顔と名前が一致してきた頃だ。そんな中で、学年のほぼ全員に覚えられているであろう女子生徒2人が1組にいた。



蒼井泉と和泉葵。


微妙な名前のニアミス。しかも顔が似ているうえに2人とも仲が良いため、ちょっとした有名人だ。



そこで困るのが呼び方だ。『あおいさん』『あおいちゃん』『いずみさん』『いずみちゃん』。どれにせよ、どちらの事だかさっぱり分からない。

そこで、学年全員の暗黙の了解として、"2人の呼び方に揃える"という決まりができた。


2人とも相手のことを名前呼びしているので、周りも2人を名前で(各々"さん"や"ちゃん"を付けているが)呼ぶことになったのだ。




「いずみちゃん!帰ろ帰ろ!!」

「あ…ごめん。私今日図書委員会なの」

「そうだっけ?じゃあ待ってる!」

「いいよいいよ。先帰ってて!!」



この学校では、図書委員だけが1年間ぶっ通しで務めなければならない。泉は、2学期最初の委員会に出席するため急いでいた。



(大変だなー、泉ちゃん。)


葵は何も委員会に所属していないため、常に何かしら仕事をしている泉を密かに尊敬している。



(……でも、ちょっと寂しいかな。)



「あおいー。一緒に帰ろう」

「あ、うん!!」



と言っても葵は社交的で、一緒に帰ったり休日に遊ぶ友達はそれなりにいたため、さほど孤独は感じなかった。
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