あたし、『魔女』として魔界に召喚されちゃったんですが。[2]


 集中して読んでいたせいか、読み終わると同時にどっと疲れが全身を襲ってきた。

 疲れた身体をソファーの背もたれにもたれかかる。

 ルクティアも、なかなかな歴史を辿ってきたらしい。

 文化などを知れれば良いと思ったが、がっつりルクティア創国の歴史を読み耽ってしまった。

 疲れた目頭を指で揉んで、生ぬるくなってきていた部屋全体に冷却魔法を施す。

 一瞬にして冷気が部屋の中に広がって、火照った身体を冷やしてくれる。

 そうすることで少し落ち着けた気がした。

 と、その時、耳元で魔力が弾ける感覚が襲った。

 
『麻央!』


 紗桜だ。

 彼女はどこか興奮した様子で、声を上擦らせて喋っている。


『天界との連絡が取れたわ!』

「えっ、本当!?」

『しかも、ルクティアへと入ることを許可してくれるそうよ!私だけではなくて、麻央たちも良いって』

「それって、国交的な招待ってやつ?」


 オスガリアの代表である紗桜と、ウェズリアの魔女であるあたしに声がかかった──あたしたちって言ってたからきっとカカオも含まれている──つまり、外交をしようとルクティアが動いたのだ。

 しかも、正式な招待らしく、日付も決まっているらしい。

 少々急ではあるが、2日後だ。


『これはチャンスとしか言いようがないわ!』

「ありがとう、紗桜!本当にありがとう!」


 こればかりは紗桜に頭が上がらない。

 何度も何度も上擦った声でお礼を言うと、紗桜はいいのよ、と笑った。


『私ができることをしただけ。ようやく麻央に恩を返せるわ』

「紗桜……」

『さあさ、ぼーっとしてないで、カカオ陛下にこのことを伝えて!準備だってあるでしょう?』


 紗桜の叱責に我に帰る。

 身体からだるさはすっかり消え去って、やる気が満ち溢れてくる。

 2日後、オスガリアに迎えを遣すので、オスガリアの城に来てくれという伝言を紗桜から受け取り、あたしはカカオにこの朗報を伝えに部屋から駆け出したのだった。


 
< 75 / 87 >

この作品をシェア

pagetop