ツバサをなくした天使 〈あた魔女シリーズ〉



 もちろん、抱き着いていた私も、その上から倒れ込んだ。

 
「よかったぁ、よかったぁ……」


 泣きつづける私を、ショウはずっと頭を撫でてくれていた。


「クレアにも、年相応なところがあったんだなぁ」


 頭を撫でながら、ショウがボソリとつぶやいた。


「……なによ」

「別に」


 まだ涙がにじんだままだけど、顔を彼の身体から離す。
 
 ショウはケロッとしていて、なんだか私は切なくなった。

 久しぶりに会えたのに……どうしてもっと喜んでくれないの?

 ショウはもともとあまり感情表現をするのが得意じゃない。

 けれど、ずっと前から考えていたことがある。

 ショウが目覚めたら、そのときは……。


「──ショウ、伝えたいことがあるの」

「どうした?」

「驚かないで聞いてね」

「おう」


 めいっぱい空気を肺に取り込み、覚悟を決めた。


「私は、ずっとショウのことが──」

「好き」

「へっ?」


 今、ショウに先に言われた……気がする。


「なにが?」


 聞き間違いかもしれないので、一応もう一度聞き直す。


「だから、クレアが」


 そういいきったショウの顔は澄み切っていて、優しくて、力強くて……。 

 
「ずっとずっと、会ったときから好きだったよ」

「知ってたよ」

「私だって」


 私も、笑いながら答えた。

 すると、ショウも軽く口角をあげる。

 そして、髪をかきあげるフリをして、耳たぶを触った。

 ショウが照れているときのクセだ。

 あのときと、変わっていない。

 そのことに安心して、嬉しくて。

 私はまた、泣いてしまった。


「よかった、ショウ。本当に」

「クレアこそ、無事でよかった……ありがとう」

「こちらこそ、守ってくれてありがとう。感謝してもしきれない」

「ああ。生きていてくれた。それだけで嬉しいんだ」


 二人でまた、存在を確かめ合うように互いをかき抱いた。


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