くるまのなかで
「どこに行くの?」
『それは明日のお楽しみってコトで』
「じゃあ、何かヒントをちょうだい。着るものとか履くもの、選びたいから」
『何でも平気だと思うよ。俺が車で迎えに行くし、長く歩くような場所には行かない』
「そっか、わかった」
デート、楽しみだな。
もうすでにこんなに興奮してる。
今夜、ちゃんと眠れるかな。
寝不足の顔なんて見せたくない。
明日はできるだけキレイな自分を見せたいから、しっかり準備しなくちゃ。
『じゃあ、おやすみ。梨乃』
「おやすみ」
こうしちゃいられない。
着ていく服くらい、今のうちに選ばなくちゃ。
私はクローゼットに戻って、服を物色した。
私が持っているのは、ほとんどが私服と併用している仕事着だ。
トラッドでマニッシュな格好や、クールでコンサバな格好が好きな私のクローゼットからは、デートっぽい可愛らしい衣類など、いくら探しても出てこない。
ていうか、私がふわふわのワンピースとか着ても似合わないっつーの。
趣味でもないし。
気合いの入れ方を間違えて、笑われてしまうのは嫌だ。
明日はいつもと同じ格好をしよう……。