精一杯の背伸びを










 しかし、どれだけ待っても応答はなかった。


 留守なんだ。



 そう認識した途端、私は脱力感に襲われて膝を抱え、しゃがみ込んだ。


 膝に顔を埋め、なんだ、と音もなく呟く。



 留守なのに、こんなにドキドキしていた自分がバカみたいだ。


 そして、こうなってみると。、


 成長した自分を褒めてもらいたいだとか。


 告白だとか。


 そういうことを抜きにしても会いたいと思った。


 一目でも良いから会いたかった。



 暖かいのか冷たいのかわからない風がやけに身にしみて、鼻がつーんとなる。また明日か、来週にでも出直そう。そう自分に言い聞かせた。


 その時。



















「小春?」




 少し、低くなっただろうか。でも、落ち着いた、懐かしい声が耳を掠めた。


 反射的に顔を上げる。


 そこには、背広姿の彼が立っていた。



「仁くん…」



 と私は茫然と呟いた。





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