精一杯の背伸びを




「なら、蹴り飛ばして構わないから早く出てってくれない?」



 私の声も榊田君に負けず劣らず冷ややかだった。


 その返答に空気がぴんと張り詰める。


 榊田君の身にまとう空気がより冷ややかになる。


 朔ちゃんと小夜ちゃんが息を呑んだ。



「お前。自分が何してるか、わかってるか?」



 低く、怒りを押さえ込んだ声だった。



「別にただ散歩してたら、疲れたから少し寝ただけよ」



 私は榊田君の顔を見ずに、なげやりに言う。



「馬鹿が。あんなところで寝て、死にたいのか!」



 榊田君が声を荒げる。


 うるさい。



「だから、少し寝てただけでしょ?いちいちうるさいのよ。ほっといてくれない?」



 私は素っ気無く返す。


 榊田君が怒っている意味がわからない。


 無理やり連れてきたのは榊田君だ。




< 148 / 233 >

この作品をシェア

pagetop