精一杯の背伸びを



 残酷な優しさだ。


 残酷なのに私はその優しさに甘える。


 もうこの恋はお終いだ。


 今度こそ私は肩の荷を下ろせる。


 頑張らなくて良い。


 走り続けなくて良い。


 だって、どうあがいても手に入らないのだから。


 まさか、こんな形で終わるとは思ってもいなかった。


 努力をすれば実ると信じていたから。


 素敵な未来が待っていると。


 素敵な結末が待っていると。


 仁くんと一緒にいる未来しか思い描いてこなかった。


 ずっと一緒にいられると信じていた。


 疑いもしなかった。


 笑いながら、泣いた。


 嗚咽に混じりの笑いが部屋に響く。


 もう笑うしかない。


 狂ったように笑う。


 何ていう、恋の結末なんだろう!


 素敵過ぎて、笑いが止まらない。


 泣いているのか、笑っているのか良くわからない。


 苦しい。


 狂うように泣いて、笑い続ければ。


 この気持ちは浄化されるのだろうか。


 このこびりついた思いを、拭い去って、消し去って欲しい。


 この報われない思いを。













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