精一杯の背伸びを

姦しい








 戻る前日の夕方に食事の準備をそろそろするかと思っていた矢先に電話がかかってきた。



『元気?小春』



『朔ちゃん!久しぶり。元気だよ。そっちは?』



 朔ちゃんは学部が一緒の友達だ。



『声聞いてわからないの?察しが悪い。もう助けてよ。榊田が』



 朔ちゃんはいつも陽気で、今もやっぱり陽気で元気過ぎるくらいに思えるのだけど、それを言うと怒るから止めておいた。



『榊田君がどうしたの?』



 私は笑いを堪えながら聞いた。


 アルバイト先で親しくなった友達と私は特に仲良くしていて、榊田君と朔ちゃん、そして小夜ちゃんと広君(広也だから省略して私はそう呼んでいる)の五人でわいわい騒いでいる。


 私が大学生活を楽しく過ごせているのは、間違いなくこの四人のおかげだ。



『今日、塾で佐々木さん。ほら、うちの大学の三年の。彼女が榊田の腕にこう何て言うの?誘惑?とにかく胸を押し付けるように絡みついたのよ、そしたら、榊田どうしたと思う?』



『わ~佐々木さん大胆だね。で、誘惑に負けたとか?』



『なわけないでしょ!真面目に答えてよ!あいつ『良く詰めものをした胸を堂々と人に押し付けられますね』って言ったのよ!?みんなの前で!!信じらんない!!』



 私は佐々木さんを可哀相に思いながらも、思わず笑ってしまった。




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