精一杯の背伸びを




 あんな格好良い男の子と付き合っていると思われて、悪い気がするはずがない。


 彼の容姿と器量は、客観的にみれば仁くんと匹敵するほどなのだから。


 もちろん、私の主観では仁くんがダントツで一番だけど。


 つまりは榊田君も、そうそうお目にかかれない優良物件だ。


 但し書きで、口を開かなければという一言を添えなければいけないが。


 とにかく榊田君の偽彼女という立場を私は結構気に入っていた。


 だが、朔ちゃんや広君にこうからかわれることが多くなると何とも微妙だ。


 嘘をついている心苦しさと、それは二人のまったくの勘違いなのだから。


 今回もただ単に私がいないせいで、女性が寄ってきたことに不機嫌になっているに過ぎない。



『そんなんじゃないよ。ただ女の子が寄ってくるのが嫌なだけ』



『謙遜はいいから、いつ帰ってくるのよ?』



『明日の夕方には帰るつもり』



『なら明後日、小夜と三人で遊ばない?男ども抜きで。それとも榊田とデート?』



『そんなのないよ~遊ぶ!遊んでください』



『なら明日にでもメールするわ。榊田知ってるの?小春が明日戻るって?』



『いや、知らないんじゃない?』



 榊田君とはこっちに来てから連絡を取ってないのだから。




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