精一杯の背伸びを





 そのまま来た道を戻らず、ふらふら歩いていると公園があった。


 水道には見向きもせず、ベンチに座る。


 空は夕焼けと闇が混在していた。


 淡い暖かなオレンジ色の光を見た途端、また涙が溢れる。



「最悪。本当に、最悪っ」



 涙を腕で拭う。


 仁くんの言う通りだ。


 私は彼の優しさに甘えていた。


 何も変わってない。


 成長したのに。


 彼の前では何も変わっていない。


 彼の前では、駄々を捏ねている。


 そんな幼い日の私のままだった。













――頑張ったなんて言う言葉は、他人が評価することであって自分で言うことではないぞ


 彼がそう言った。


 だから絶対に人前で口にしたことはなかった。


 幼さの象徴だったから。


 それなのに。


 よりによって彼の前で、そう言って泣き喚いたのだ。


 私は。


 これだけは言いたくなかった。


 彼にだけは。


 今は大好きなオレンジ色の光を見ていたくなくて、私は、ぎゅっと目を瞑った。


 涙がつたう頬がひどく不快だった。





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