恋が都合よく落ちてるわけない
「あんまり楽しくなさそう」
私がそうさせてるのだ。これじゃ一緒にいる意味がないよ。仁志さん。

「ああ、そう見えたならごめん」

「いいよ、無理しなくても。何なら部屋別にしてもらおうか」


「違う。俺が混乱してるだけ」

「混乱？どうして？」

「君に会えてうれしいはずなのに、
素直に喜べない」

「奏と居たこと？」

「それだけじゃない。
もっと根の深いところで」

「どんな風に怒ってるの？
何に怒ってるのよ？」


「例えば、君は課長の事になると必死になって、俺の言うことなんて、全然聞こうとしない」


「本当だ。ひどいねそれ、恋人失格だね」

「まだある。警戒心がなさすぎで、他の男に付け入る隙を与えてるし、
課長のためにナイフ持った女に向かって行くし。
いくら体があっても、俺の身が持たない」

「ごめんなさい。私が悪かった。心配しててくれたのに、あなたのこと無視して」

近づいて、ぞっと後ろから抱きしめる。大きくてガッチリした体。仁志さんが、身震いした。


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