恋が都合よく落ちてるわけない
何が何だか
実加が、セッティングしてくれたのは、
経理課の女の子だった。
いかにも真面目そうなってタイプだ。

「奥田紀子です」

「はあ…」

私に会いたがるなんて、
てっきり男性だと思った。

別にうぬぼれてるわけじゃないけど、
単に男より、女の方が、
会いたがる理由が
思いつかないのだ。


「単刀直入にいうわね。千鶴、あんたまだ、西川元とつきあってる?」


ビールを一口も飲まないうちに、
実加にそういわれた。
ちょっと、少しは前振りしてよ、実加。


「いきなり何よ…」


「元さんとつきあってるんですか?」


「いいえ。もう違うわ」


「そうですか…
もう違うってことは、前は…」



ちょっと、どういうつもりよ…
と実加の方を見る。


「例の事件、千鶴も知ってるでしょ?」


「それで?」


「私、気づいたの…」


「えっ?」


「書類の数字がおかしいって」


「そう…」


「じゃ、上にそう言えばいいじゃない?」


「駄目。私の上司、元さんだもの…それに連絡取れないし…」


「えっ?」
私の疑問を美加が聞き逃した。

「じゃあ、もっと上は?」


「ちゃんと話し聞いてくれるのか、
分からないから。どうしたらいいのか」


「ねっ、千鶴、
須田さんの連絡先わかる?」


「ええ…わかるけど…」



「直ぐに連絡取って」



「わかった」


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