恋が都合よく落ちてるわけない
「お食事とってもおいしいです。
ごはんお代わりしてもいいですか?」

須田母が私から、
御飯茶碗を受け取り御飯を盛り付け、
私の前に置く。

その間、無言…

お代わりなんて、図々しかったかな

「母さん、良かったな。
おいしいなんて言ってもらって」
と須田父。

須田さんもお代わりを頼んだので、
須田母が席を立った。

すかさず、須田父が
「御飯、おいしいと言ってもらって、
母さん喜んどるぞ」

えっ…どこが喜んどるのか、さっはり分からないんですけど。


「喜んでくれてる?お母様は…」



「ああ、そうだよ。なあ、仁志?」



「ああ。飛び上がるほどな」



「あの…」


「十年も観察しとると分かる」と須田父。


「まあ、そうだね」と須田さん。



「そうなんですか…」
私には、髪の毛一本程も揺れたのかどうなのかわからない。


「千鶴さんは、ウェディングドレスを着るのは、いつがいいかな?」


須田父が突然言う。

須田さんが、味噌汁を詰まらせた。


「ちょっと待って、
父さん…俺たちまだ、
付き合ったばっかりなのに…」

「ばか野郎、
結婚するつもりもなくて
お前はなんてことしとるんだ!!」



「親父、物事には順序がある」


「いいや。お前が考えとるのは、
順序だけだ」


私は、笑いを堪えきれず、
あははと笑いだした。



「それより、父さん、
カレンダーに丸付けるって、
何するんですか?」


「ええっ」
二人が同時に声を発して、
そしてみるみる顔を赤らめた。


須田さんが狂ったように笑いだした。


「千鶴、しばらく先のカレンダー見てみろよ。赤ペンで丸してあるから」

二人が更に赤くなってうつむいた。



可愛い…
このかわいさって、いったいなんだろう。
千鶴はようやく笑いをこらえて思った。


< 71 / 196 >

この作品をシェア

pagetop