~Still~

屈服の沈黙

「あり得ないですよぉ、先輩~!」

「仕方ないでしょ!神谷颯太自身がダメだって言ってるんだから!」

高宮理恵は丸の内のオフィス街を闊歩しながら、後輩の山瀬柚希に食って掛かった。

「何なんでしょう~?先日の接待、失敗だったんですかあ?」

「知らないわよっ」

理恵はイライラしていた。

神谷颯太の酒蔵、神谷酒造が、上半期一番の出来だった酒を海外の日本酒品評会にエントリーすることが決まり、その密着取材を取り付けた矢先に断られたのだ。

正式には口約束の段階で、契約を交わしたわけではなかったが、その一歩手前であった事は確かだ。

「あの超イケメン社長、神谷颯太はどうして心変わりしたんですかねぇ!?」

「どうでもいい!エナミコーポレーションの江波社長にアホ取ってるでしょうね!?」

「はい!抜かりはないですよぉっ!」

……心変わり。
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