~Still~
第六章

視線の先

忙しなくしているうちに、瞬く間に三ヶ月が過ぎた。

映画『Agrippina』の大ヒットに伴い、エレナの生活も変わり始めた。

「おい、ポッパエア、仕事の話だぜ」

「あんたはまだジョーイのままね」

相変わらずのジョーイとの会話。

「資料は要らないらしいから、手ぶらでいい。地図はファックスで送る」

「分かった」

「エレナ」

「なに」

「お前の演技、良かったぜ」

?!

ジョーイ、とエレナが言いかけた時にはもう、電話が途切れた。

ありがとうくらい、私だって言うのに。

エレナは苦笑した。
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