午前0時の恋人契約



「あら、そこのかわいいお嬢さん」

「へ?」



突然かけられた声に振り向くと、そこには体にぴったりとしたゼブラ柄のワンピースに、ゴールドのストールを羽織り、黒い女優帽に大きなサングラス……とこの街では少し目立つ格好をした女性。

強烈なインパクトに一瞬ギョッとしてしまう私に、彼女は真っ赤な口紅を塗った口元で笑う。



「やだ、そんなに驚かないで?アタシよ、アタシ」



サングラスを外すのは、貴人さんの働くレンタル彼氏会社の社長……桐子さんだ。

先日同様に目立つ格好をした彼女にようやく思い出し、私は「あっ」と声をあげた。



「こんにちは、お世話になっております……」

「どうも〜。今日はお休み?」

「はい。貴人さんとは夜にお会いする予定で」



にこにこと笑い、高級そうな香水の匂いを漂わせ、桐子さんはつけまつげのついた目元をパチパチとさせる。



「あ、よかったらちょっと一緒にお茶しない?アタシも待ち合わせまで時間潰してたところなの」

「えっ、でも……」

「ね、そうしましょ!うん決まり!向こうに素敵なカフェがあるのよ〜」



社長さんが私なんかとお茶をして楽しいかな、そう戸惑う気持ちを気にすることなく、桐子さんは私の腕を引き赤いピンヒールでコツコツと歩き出した。



ま、マイペースな人……!

けどその積極性は見習いたい気がしなくもない……。そんな気持ちで、戸惑いながらも慌ててついていった。



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