午前0時の恋人契約



「あの……さっき一度桐子さんにも聞いてしまったんですが、貴人さんにも聞いていいですか?」

「ん?なにをだ」

「貴人さんは、どうしてレンタル彼氏になったんですか……?」



ぼそ、と問いかけると、貴人さんはそんなことを聞かれるとは思わなかった様子で少し驚く。

そして言いづらそうに小さく口を開いた。



「……実は俺、女が好きすぎて毎日女と過ごしていたいんだよ」

「えぇ!?」

「いや、嘘だけど」



って、またこのパターン!桐子さんと同じことされた!



貴人さんがからかうように言うと、運ばれてきた飲み物。

それはドクロの形のグラスに入ったビールと烏龍茶で、意外と普通な見た目の飲み物に、貴人さんは安心したようにそれを受け取る。



「あの、本当は……?」

「言わない。んな恥ずかしいこと言えるか」



うっ……。やっぱり簡単には教えてくれなかった。

無理に聞くのもどうかと思いそれ以上問うことはできず、目の前に置かれた烏龍茶を一口飲んだ。




「けどいい仕事だと思うよ。これまで暗い顔してた人が、たとえ仮でも恋をして綺麗になっていくのは、嬉しい」



それは、先ほど桐子さんが言っていたこととよく似ている。



『貴人を含めうちのお店の子たちは全員、女性の人生を変えるくらい最高の彼氏になる』



例え仮でも、恋をして、彼の力で人が変わっていく。



「ほ……本気になってしまったり、しないんですか?」



なにを聞いているんだろう。

他の人に本気になってしまう?私に本気になってはくれない?そんな意味を含めた、問いかけ。



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