午前0時の恋人契約



「ん?なにか困りごとかね?」



すると、声をかけたのはフロアの前を通りがかったところだったらしい店舗管理部の部長である中年男性。



「あ……お疲れ様です、それがコピー機が」



うっすらとした頭部をかすかに揺らした、痩せ型のメガネの部長は、私を見ると目尻を下げてフロアへ入ってきた。



「あぁー、用紙切れか。用紙ならそこの棚の一番下にあるだろう」

「え?あ、ありました。ありがとうございます」



言われた通り足元の棚をしゃがみ込んで見れば、そこには確かに真っ白いコピー用紙があった。

これを機械にセットすれば……とコピー用紙を取り出し立ち上がると、いつの間にか隣には部長が立っている。



「どうかされましたか?」

「いや〜うちの津賀が言っていた通り、市原さん最近綺麗になったと思ってなぁ」



そういえば、店舗管理部の部長ということは津賀くんの上司だ。彼がいつもの様子であれこれと話していたのだろう。

ニコニコとした笑顔で私を上から下まで見る部長に、少し恥ずかしくなってしまう。



「えっ、本当ですか?」

「あぁ。もともと控えめな美人だとは思っていたが、最近はやけに色気が出てきたというか……さては彼氏だな〜?」

「い、いえいえ!そんな!いないです!」



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