キミノカケラ〜群青色の空と君と〜
絶望と白い世界

◇◆◇


「うわー!綺麗!」



熱海の海をタクシーの窓から眺める。

今住んでる街の海も綺麗だけど、熱海の海はまた違う。

海は繋がってるはずなのに、こんなにも違って見えるなんて本当に不思議だ。

熱海の海はとにかく青が濃い。
目が釘付けになる。



「本当に綺麗ね。晴れて良かったわ」



菜摘さんは、はしゃぐ私を見て「ふふふ」と笑って言う。



今回の旅行は一泊二日で老舗旅館に宿泊する事になっている。創業200余年のその旅館は、懐石料理はもちろん、温泉も有名で、露天風呂は熱海の海が一望出来る。

特に満天の星空と月の明かりに照らされた穏やかな海が堪能出来る夜の露天風呂が、この旅館の人気の理由の一つになっているのだ。

今回は観光する時間が少ないため、ゆっくりと温泉を楽しむ予定。



「菜摘さん!旅館に着いたら早速温泉行きましょう!」


「いいわね。私、娘と露天風呂に入ってゆっくり色々語り合うのが夢だったの」



顔を見合わせて笑うと、助手席に座る哲二さんもハハッと笑った。



「おいおい。二人で俺たちの愚痴でも言うんじゃないだろうな?」


「さぁ、どうかしら?何を話すかは女同士の秘密に決まってるじゃない」



哲二さんも菜摘さんも、シュウも、私も、皆笑顔だった。

和やかな車内。
幸せ満開のムード。

これから最高の思い出を、楽しい時間を過ごす予定だったんだ……








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