千代紙の小鳥

「新郎貝塚 虎は、新婦波田 花を一病めるときも───・・」


隣には、リュウジじゃない人。

目の前には、愛を確かめる人。

私を包むのは、純白。


「新婦波田 花は、新郎貝塚 虎を・・・一生愛することを誓いますか?」



もう、私の左手に貴方の温もりはない。
 
感じることも、思い出すこともできない。


「……」



ただひとつ、貴方の声だけが、

ただふたつ、あの光とあの一瞬の刻だけが、


「…花?」


あの一瞬の後に流れた涙を、目印にして。

いつか、必ず───・・・






「 私は、ここにいない蛍を想う 」




  ろ:ここにいない蛍       完
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